北電、泊原発の安全対策1600億円 8年間で緊急時制御室など 

北電、泊原発の安全対策1600億円 8年間で緊急時制御室など (2014年5月3日  日本経済新聞)

2014/5/3() 午後 0:00

日本経済新聞(nikkei原発問題

2014/5/3 6:00 情報元日本経済新聞 電子版 

 北海道電力は泊原子力発電所(泊村)の安全対策に2018年度までの8年間で1600億円超を投資する。原子力規制委員会が策定した新規制基準に対応し、緊急時の制御室対策所を設ける。昨春には15年度までの5年間で900億円を見込んでいた。5日で泊原発の停止から2年。規制委の安全審査は難航しており、再稼働の行方は見えない。 

 泊原発の停止後、北電は安全対策費の見通しを逐次、引き上げている。昨年4月に値上げを申請したときは以前の計画より300億円上積みした。その後7月に策定された新規制基準に沿い、より長期間の投資計画に見直した。 

 建設が進む防潮堤に加え、重大事故が起きた緊急時に使う非常用発電機などの制御室や、放射線を遮る対策所を新たに加える。2月に規制委の審査で不足と指摘された、3号機の原子炉を冷やす装置の予備配管も追加設置する。 

 14年度の設備投資額は前年度比5%減の1306億円と昨春時点の計画を20億円ほど上回る。このうち泊原発の安全投資は500億円と16%増える 

 一方、昨年7月に安全審査を申請した泊原発の再稼働の行方は、混沌としたままだ。 

 「疲れますね。なんとか(再稼働を)実現させたいと思うが相手のあることなので」。4月30日の決算記者会見。泊原発停止から2年が近づくことを問われた川合克彦社長はそれまでの淡々とした説明から一転、先の見えない規制委の安全審査に思わず感情をにじませた。 

 3月に優先審査が決まった九州電力川内原発(鹿児島県)は、地震による揺れの想定が認められたのが大きな契機となった。 

 北電はあと2つの地震に関する分析について了解を得られれば揺れの想定にめどがつくと見込む。ただし決着の時期は全く見通せない。解決しても「安全向上にさらなる負担が生じるだろう」と幹部は漏らす。 

 原発の安全投資が増えるなか、電気の供給を受けやすいよう北海道と本州を結ぶ送電線の増強工事にも着手したところ。原発停止で火力の燃料費が膨張し3期連続で連結最終赤字を計上する一方で、想定外の設備投資がかさんでいく。 

 09年に泊3号機が稼働すると、北電の発電量に占める原発比率は4割を超えた。全国で最も新しいだけに稼働間もなく停止すると減価償却負担が重い。全国の電力会社で真っ先に再値上げを打ち出したのには、そんな背景もある。 

 電力利用がピークを迎える冬は数値付きの節電目標を掲げ、原発なしでなんとか2度乗り切った。3度目の冬まではもう半年しかない。